2024年6月に成立した改正入管法および改正技能実習法により、従来の技能実習制度を廃止し、育成就労制度が創設されました。本制度は2027年4月1日に施行される予定です。
本記事では、新制度の目的や実務上の変更点について、まずはその概要を解説します。
育成就労制度の目的
従来の技能実習制度は「途上国への技術移転(国際貢献)」を建前としていましたが、実態は人手不足を補う労働力として活用されていた側面が強く、目的と実態の乖離が課題となっていました。この乖離が様々な問題を生じさせているのではないかと指摘されていました。
育成就労制度では、以下の2点を目的として掲げています。
- 人材育成:特定の産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を有する人材を育成すること。具体的には、3年間の育成就労を通じて「特定技能1号」水準の技能を有する人材に育成することを目的とします。
- 人材確保:国内で人材を確保することが困難な産業分野において、労働力を確保することを目的とします。
特定技能制度との連続性・一貫性
育成就労制度の特徴の一つは、特定技能制度との連続性・一貫性です。従来の技能実習制度においては、移行対象職種・作業の枠組みによる制限があり、技能実習2号・3号を行うためには移行対象職種・作業に該当する必要がありました。
育成就労制度においてはこの移行対象職種・作業の枠組みが撤廃され、特定技能と同様の産業分野・業務区分の枠組みとなります。育成就労制度は、特定技能制度と同様の産業分野(一部例外あり)において設定されます。また、育成就労制度における業務区分や育成就労外国人が従事する業務は特定技能制度と同一とされます。
- 育成就労産業分野:育成就労は、特定技能制度が導入されている産業分野(特定産業分野)のうち、人材育成が必要と認められた分野において導入されます。現時点において特定産業分野のうち「航空」と「自動車運送」を除く17の分野において育成就労が設定されます。
- 業務区分:従来の技能実習における「職種・作業」の枠組みは廃止され、特定技能と共通の「業務区分」の枠組みで整理されます。
育成就労制度においては、育成就労産業分野の業務区分の中で主たる技能を定めて計画的な育成・評価が行われることとなります。
育成就労制度は、技能実習制度を基礎としてこれを発展させた制度であり、認定を受けた育成就労計画に基づいて就労をすることや、監理型(従来の団体監理型)の育成就労においては監理支援機関(従来の監理団体)の監理支援を受けることなどの枠組みは従来の技能実習制度を踏襲しています。その一方で、特定技能制度との連続性・一貫性を持たせる観点から、産業分野や業務区分の枠組みは特定技能制度と共通となりますし、また、「過去1年以内の非自発的離職の不発生」などの特定技能制度の要素が盛り込まれます。
育成就労制度とは、いわば技能実習制度と特定技能制度を組み合わせたような制度といえ、その分従来の技能実習制度よりも規制が複雑化し、強化される側面があります。
転籍(受入機関の変更)の新ルール
実務上、最も注視すべき変更点は、一定の要件下で本人意向による「転籍(転職)」が認められたことです。
- 転籍の要件:
- 同一の機関において、分野ごとに設定された期間(1年〜2年の範囲内)を超える就労実績があること。
- 分野ごとに設定された技能検定試験(基礎級等)および日本語能力(日本語能力A1相当等)の試験に合格していること。
- 転籍先の受入機関が適切であり、育成就労計画を策定できる体制にあること。
- 費用分担:無制限な転籍による受入企業の不利益を防ぐため、転籍元と転籍先での費用分担の仕組みが導入される予定です。
育成就労制度においては、本人の意向による転籍が大きく認められるようになります。分野ごとの実情に照らして分野ごとにルールが定められており、現時点で介護、建設、造船・舶用工業、自動車整備、外食業、工業製品製造業、飲食料品製造業、資源循環においては、転籍制限期間を2年と設定することが可能です。
経過措置
育成就労制度は2027年4月1日に開始されますが、同日時点で既に来日している技能実習生は、引き続き技能実習を行うことができます。なお、同日の時点において2号技能実習を1年以上行っている場合に限り技能実習3号に移行することも可能です。
まとめ:選ばれるためのコンプライアンス体制の整備・強化
育成就労制度の開始は目前に迫っており、現在技能実習生を受け入れていて、今後も育成就労外国人の受入れを検討している企業は、速やかに対応が必要です。育成就労制度については、今後も育成就労計画の審査基準や運用要領などが公表されますから、情報を速やかに入手しつつ対応を進めていく必要があります。
全体として規制は複雑化し、強化されていきますので、育成就労外国人を導入しようという企業においては、これまで以上に、外国人雇用におけるコンプライアンス体制を整備・強化していくことが求められます。
